中島京子「イトウの恋」
悲惨なニュースが続く中、中島京子さんの「イトウの恋」を読みました。
ずっ と気になっていた作家ですが、フランスにいると中々入手できずにいました。この本が震災真っ只中で私に届いたのも何かの縁かも、と思って読み始め、一ペー ジ繰る毎に、やはりこの出会いは必然だったんだ、と確信しました。本との出会いって、人との出会い同様、奇跡的なタイミングだったりしませんか?
横 浜が舞台で、パラレル・ストーリーというのでしょうか。ペリーの黒船が来てから、しばらくの、歴史の一ページにも満たないような短い期間に、これまた歴史 に残らないけれど、確実に国際間で活躍した、一人の通訳の手記が発見されるところから話が始まります。詳しいことは、上記アマゾンのリンクを見てくださ い。
横浜は、1853年のペリー前は何もない、人家も百戸に満たないような閑散とした村だったのが、開港と共に栄えた。それが1923年 の関東大震災で一掃されたそうです。わずか70年。それがまた今のようになり。日本って、天災・戦争で何回も叩きのめされ、そのたびに新生してきたんだ、 とその力強さに、今後の東北復興に希望を見出したり。
イトウという通訳は、文明開化の過渡期に、犠牲者的な生い立ちを背負いながら、明るく前に進んだ一市民。その姿にまた励まされます。一方、ストーリの軸となる手記はイトウが老いてから書かれたものなので、その歳月の流れに人生は夢のよう、幻のよう、と胸せつなくなり。
横浜っ子の実保さんはもちろんのこと、今日本を想う皆さんに読んでいただきたい本でした。