2020年10月30日金曜日

フランスの秋 パット・ドゥ・フリュイの作り方

 


サルト地方の田舎の家よりボンジュール!

子猿たちの学校が秋のバカンスに入ったので、週末からこちらに来ております。バカンスって、あれ、また?と思われた方、ええ、そうなんです。フランスでは6週置きに2週間のバカンス(夏は2ヶ月+)があるのですよ。親は忙しいったらありゃしません。

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今回の私のミッションは、花梨(仏語Coing)の加工です。
花梨、日本でもたまに店頭で見かけましたが、どのようにして召し上がるのでしょう。私が初めて手にしたのは、フランスでのことでした。義理両親の田舎の庭園でたくさん採れるのです。
フランスでは、ジュレにしたり、パット・ドゥ・フリュイというお菓子にします。

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花梨はしっかり熟したものを使わないと、結構な渋みがあります。こちらは、3週間前に、義父が収穫し、私が来るまでカーブにて温存していたものです。5年前までは義母が、昨年までは義父が、自ら調理していたのですが、ついに私に譲られてしまいました。
というのも、花梨の加工は時間がかかるのですよ。

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この大きな蒸し器を使って、花梨のジュースを抽出しジュレを作ります。
そして残った身の部分で、パット・ドゥ・フリュイを作るのです。
この蒸し器、一番下は、お湯を張るところです。
二段目は、下の写真のようになっています。真ん中の穴から蒸気が上がり、お堀のようなところにジュースが溜まっていく仕組みとなっています。

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その上の段は、下のようになっています。

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ここに乱切りにした花梨を入れて蒸すこと一時間あまり。種も一緒に蒸し、天然のペクチンが下の段に滴るようにします。

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これで2キロほど。今回は4キロちょっと在ったので、2回に分けて蒸しました。

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4キロ余りの花梨から取れたジュースは1.5リットル。
ジュレは、ここに同量の砂糖とペクチン少量を入れ、ジャムを作るときのように、ぐつぐつ煮立て、沸騰したら5~8分。

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ジュレが出来ました。ペクチンの量が多すぎたみたいで、ちょっと片めなのが残念。瓶の下部分に隙間があるのは、瓶に熱々のジュレを入れ蓋をしたら、すぐ逆さまにしてジュレが凝固させたからです。このジュレも、いずれ重力で下に行き、ジュレと瓶の蓋の間の隙間は真空に近くなる、という仕掛けです。これで瓶内を真空にさせてカビの発生を防ぎます。
ジュレは薄いトーストに、ジャムのように塗っていただきます。

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さて、パット・ドゥ・フリュイ。
ウィキペディアによると、フランスの中央山麓地帯発祥のお菓子とのこと。こうやって保存し、冬季もフルーツが食べられるようにしたのでしょう。
フランスでは、パット・ドゥ・フリュイはチョコレートと並ぶ人気もの。お値段もチョコレートに近いです。食後にエスプレッソとともに、軽くつまむ、そんなお菓子です。

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上の写真は、先ほどの花梨の、蒸した果肉の部分を裏ごしし、砂糖とペクチン(こちらはかなり多め)を加えて煮て、型に流し込みます。ペクチンの効果ですぐに固まります。これは、500gの果肉、砂糖同量、ペクチン80gで作りました。本来のレシピでは、砂糖、ペクチン共にもう少し多めです。
写真の、なだらかでない部分は、鍋にこびりついた部分です。勿体ないから加えましたが、すでに固まっていたので、馴染むことなく凸凹。大ざっぱな私は気にしません!

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これをあら熱取れ、しばらく放置し乾かしてから、切って、粗目のグラニュー糖にまぶして出来上がり。

ジュレも、パット・ドゥ・フリュイも、薔薇のような芳香がうっすら、酸味も程よくて、エレガントな美味しさです。

この抽出型蒸し器がなくとも、花梨を薄く銀杏型に切って水をひたひたになる程度にかぶせ、ゆでたものでも十分美味しく出来ます。
ゆであがったら、果肉とゆで汁を分け、ゆで汁は煮詰めて水分を若干飛ばしてから、上記のようにジュレにし、果肉の部分で同じようにパット・ドゥ・フリュイにすればOKです。
花梨は、のど飴もあるくらいですから、喉にも良いはず。
注意!花梨は、黄色が少し濃くなったな、というくらいまで熟させてくださいね。そうでないと、渋みがあります。

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素敵な秋を~


2020年10月4日日曜日

フランスのコロナ事情③ PCR検査を受けました

秋深まるベルサイユよりボンジュール!

この一週間、見事に雨降りの毎日でした。
気温は10~15℃。陽もぐんぐん短くなっていて、朝8時頃まで暗いのです。登校・通勤にはつらい季節がやって来ました。

……ですが、わが家はみんな朝寝坊。学校にも行かず、会社にも行かず、子供達は9時過ぎまで寝ていました。
なぜって? 実は、今週わが家はロックダウンしていたのです。

兄猿の鼻風邪に気づいたのが金曜日のこと。兄猿の場合、鼻から始まることが多いので、ただの風邪だと思っていました。
が、ふと夫がコロナ関連のサイトを調べたら、若い人の場合は、鼻から始まることが多いんですって。
そこで取り敢えず、わが家はロックダウンしたのです。

そこから始まった私と兄猿の「PCR検査を巡る旅」。
フランスは誰でも簡単にPCR検査を無料で受けられると聞いていたのですが、いやいや、フランスでそんなにスムーズに事が運ぶはずはなく。
雨に打たれ、非情に晒され(はい、大げさです)、そんなレポートです。

火曜日……
夫はテレワークに、ちび猿も学校は休みました。兄猿は自室で一人ご飯の刑です。
教育省のコロナ対策サイトを見ると、まず医師にコンタクトして判断を仰ぐとあります。、家族医に電話すると、①確かに疑わしい。②診療所に兄猿を連れて来るな ③PCR検査の処方箋を書くから取りに来なさい、と。
でもこの家族医は夕方からしか診療所に来ない。「処方箋なくても、検査受けられますか?」と聞くも、答えはうやむや。早く検査したかったのですが、無駄足踏むのも嫌なので、素直に処方箋を待ちました。
ここですでに一日ロスしました。
水曜日……
PCR検査、ラボ(検査所)で受けるか、病院に行くか。
病院に行くとさらに病菌を貰いそうだからラボかな、とネットで調べると、症状がある人はラボでは受け付けない、とある。では病院か、と思って病院サイトに行くと、次回のアポは一ヶ月先、とあります。
それでも兄猿と病院に赴くことに。フランスは、決まりはどうあれ実際に足を運び交渉すると何とかなる時もある国なのです。でも結果は同じでした。
帰りにラボに寄ると、ドアに太字で「症状ある方は一歩も踏み入れてはダメ」と貼り紙されています。
兄猿はもううんざり顔。「今週はテストが5つもあったのに......遠足もあったのに……」
昨日は学校休めてウキウキだったちび猿も、友達を家に呼ぶことも出来ないし、兄猿とも遊べない「このコロ休はつまらない」とぼやきます。
木曜日……
咳も治まったので、兄猿といざラボへ。数人しか並んでいないのでラッキー!と思ったのですが、このラボは抗体検査しかしていないそう。家を出る前にしっかり調べようよ母、と反省しつつ、さらに2キロほど離れたPCR専門のラボに向かいます。
この間、雨傘の下、兄猿は嘆きます。
「なんだよこれ。もうヤダよ。検査しないと学校にいけない。でも病院だと一ヶ月待ち。誰が一ヶ月先まで待つって言うんだよ。ラボはラボで、症状がなければ調べるって本末転倒じゃないか。たとえコロナだっとしても、もう消えているよ、意味ないよ。ボク元気だもん。PCR検査、ボクの担任は4時間待ったって言ってた。もし2時間以上待たされるなら、ぼく帰るから。学校には、コロナじゃなかったって言えばいんだから」
兄猿の歎きを聞いて、少しほっとしました。兄猿は、余り文句言わない子、というか、「何ごともポジティブ・シンキングの21世紀少年」なので、この状況をどう消化しているんだろう、と気になっていました。
「あなたは何も悪くないのに本当に不運だと思う。同情しているよ。でもしょうがないことってあるのよ。知らずにコロナ菌持っていて、移しちゃったりしたら、そっちの方がやりきれないでしょ」
というと、兄猿は「ふぅー」とため息を漏らして、やり場のない怒りを堪えていました。

やっとラボに到着。そちらは10人ほど並んでいて、中には顔見知りの子もいて、うちの子だけじゃないことに何故か慰められるバカ母。
1時間ちょっと外で待ち(雨が冷たかった!)、検査して貰いました。検査は18~24時間で出る、とのこと。ラボの受付の方がとっても感じ良くて救われました。

前日は病院→ラボ→家、この日はラボ①→ラボ②、と計10キロ近く行脚したので帰りは贅沢(子供達には「バスは贅沢」と言っているので)してバスに。
道中、兄猿が達成感一杯の顔つきをするので笑っちゃいました。思わず私も、「陽性だったら」ときのことは考えず今は「長かったPCRまでの道」を終えたことを喜ぶことにしました。
金曜日……夕方にラボに電話すると、その場で陰性だと教えてくれました。

以上、長々と記しましたが、いかが思われますか。
地域の病院の状況によるのでしょうが、
症状なくなって初めて検査を受けられるという実状。
たとえコロナに感染していたとしても菌が察知されないケースも多いのでは。

また、この時間のロス! うちのケースで言えば、もし、家族医を挟まなくてよかったのなら、そして病院が受けてくれたのなら火曜日には検査できました。それが木曜日まで待たされた。たった二日の違いと思われるかもしれませんが、こういう小さなことが、感染の原因になっていると思うのです。
せっかちなフランス人は、コロナではないかもしれない子供を自宅待機させるのが嫌がることでしょう。風邪の症状が治まったなら、「PCRなんて受ける必要ないわね」と、「ただの風邪でした」と言って学校に行かせる人も多い気がします。

ちなみに、夫の会社のルール(恐らく多くのフランスの会社も同じ)では、陽性と出た人と濃厚接触していた場合は自宅隔離せよ。疑わしい期間に関しては出社してもよいのです。これも変ではないですか。

結論としては、怪しいと思ったらすぐに検査できる体制でないとダメだと思いました。
フランスではそれが出来ていると勘違いしていたので、そうではない実状を知ってガッカリしました。
一方、検査結果は本当に2日以内に出たので、それは公言通りで「よしよし」、でももっと早く分かって欲しいとも思う。
誰もがリトマス試験紙のように、検査できて結果もすぐ分かるようになったら、感染もかなり少なくできるでしょうね。

昨日のフランスの一日の感染者数は、1万3千人弱。PCRを巡る旅を経た今、本当の人数は、これよりずっと多いのだと推しています。

どうぞ皆様、Stay Safeされますように!