2019年1月31日木曜日

家作り ① 台所編、キャロー・ド・シモン

今年二度目の雪が降りました
皆様、今年になって初めてのお便りとなります。
2019年も、こちらベルサイユから、ふと思ったこと、考えたことなどをお伝えしていきたいと思っています。
どうぞ宜しくお願い致します。

今年の第一便は、家の改装について、です。


昨年6月よりスタートしました。それ以来、ずっと家のどこかに穴が空いている、もしくは、瓦礫が山積みとなっている、そんな状態のわが家です。

周りの方からは「大変ね」と同情を寄せていただいているのですが、私としては、イメージが形になっていく様子を見ることが、何ともエキサイティングで、楽しい数か月を過ごしています。


例えばこんな穴。
これは12月、50年来の古い窓を
二重窓に変えたときの窓からの(?)風景です。寒かったなぁ。
そんなこんなのハウス・リノベーションなのですが、
今回は、台所の床材についてお話しをしたいと思います。

家を改装するにあたって、私の望みは2点のみ。
一つは、暖炉にレンガを使うこと、二つ目は、家のどこかに、横浜山手西洋館のベーリックホールのテラスルームのような、格子模様の床を作ることでした。

私は、何かこういうノスタルジックなデザインに引かれるのです。
エレガントでもなく、ミニマリストでもない。
モダンでもなく、そして和風でもない。
何か思い出の匂いがする、そういう空間にほっとします。

夫は、もっとエレガントなデザインも好きなのですが、うちは、本当に素朴でさっぱりとした建物なので、張り切ってエレガント風にすると滑稽だね、ということで、「コージー&ノスタルジック」を合い言葉に、内装選びをしています。

ベーリックホールは、子猿たちが2年間通った
横浜の学校の目の前にありましたっけ。
「私の願望一点目」の暖炉については次回に回すとして、まずは台所の床材についてお話ししたいと思います。

家中に樫材のフローリング(Parquet パルケ)を敷くことは早々に決め、でも台所は違ってもいいね、ということになりました。

そこで、格子模様(これはヴィトンでお馴染みのDamier ダミエと呼びます)をお願い!と切望しましたよ。私の夢でしたからね。

モダン好きの建築家のムッシューは、「後悔しませんか? 考え直しませんか?」と抵抗しましたが、私も頑固に譲らず、何とか説き伏せました。

ちなみに、こういう時、男はダメですね。夫は、何かと無難なデザイン・色になびくんです。それで結果後悔するという・・・・・・。

私が「私達はダミエが好きなんです!」と言い張ったときは、夫も「そうだ、そうだ」と声を出した癖に、建築家のムッシューが「でもね、...」と反対の理由を述べられると、180度方向転換して、「なるほど、考え直す?」って。

ま、そんな遣り取りもありましたが、ダミエ決行となり、

次の問題は、どんな材質のタイルを使うべきか、です。
これはブルゴーニュ地方で作られる石材によるダミエの変形、カブション模様
石材は高いし、脂染みに弱そうですし、素朴な拙宅には荘厳過ぎる。

大理石も高いし(←ま、結局はこれなんですけどね)、照明の下に映ったときの、あのつるつるした感じが、アンチ・コージーな気がする。
こちらは大理石、@ベルサイユ宮殿!

そこで勧められたのが、セメント材のタイルでした。フランス語ではCarreaux de ciment キャロー・ド・シモン。

昨今フランスでは復古人気でして、インテリア雑誌や友人宅、お店などでも良く見かけます。また本物ではないかもしれませんが、色柄が独特の味わいなので、壁のアクセントに使われているのもよく見かけます。
マレ地区にある専門店。主にモロッコやポルトガルで生産されていましたが
こちらのは、ベトナム産だそう。
もちろん、古い邸宅でもよく使われていて、義理の両親の別荘のエントランスもキャロー・ド・シモンです。
2cm弱と、結構な厚みなので、床材にしても割れにくく、色も上部何ミリまで染みこませているので、かすれて柄が消えちゃった!ということも少ない、ということです。
200年くらいは経っているのかな?
それでも損傷なし。
ただ、手入れはそれなりにしなくてはなりません。
セメントは粒子が細かいのですが、表面が完璧なツルツルではない分、汚れが入り込んでしまう。
また、防水塗料のようなものを定期的に塗らないと、台所であればなおのこと、脂染みもつくし、色落ちも、ないとは言えない、などなど。

色々と考えたのですが、やってみることにしました。下の写真です。

写真では良く映りませんが、白と汚れた深緑の格子模様に縁取りも付けて、というシンプルなものにしました。キッチン以外、玄関も居間もパルケ、茶色一色なので、よいアクセントになったかなぁ、と自己満足中。

丸裸の台所。壁のタイルも「変えたら?」と勧められたけど、
良い感じにセピアがかってきたので、そのままにして、とお願いしました。

遠目でみれば、傷も気にならない!
ただですね、やっぱりメンテナンスが大変です。
すぐ汚れますし、傷もつきやすい。朝起きると、夜遊び好きなマエストロの足跡がそこら中にあって、朝から雑巾掛けです。

それでも大人気のキャロー・ド・シモン。
ここに、フランスと日本の違いを感じています。

このキャロー・ド・シモンを知ったときには、
「こんなにきれいなもの、絶対日本でも人気になるだろうな、皆にお勧めしたい!」
と興奮したのですが、こうやって使ってみて、傷がついたり、色も均等でなくて、手入れが大変なものは、今の、街中ピカピカ、室内は無傷・全自動の日本では許容されないだろうな。それくらいなら、頑強で手入れが楽な素材の方が好まれるだろうな、と、押し売りすることを思い留まったのです。

目移りしてしまって選ぶのが大変でしたっけ。
ちなみにパルケも同じです。樫材のパルケも、傷はつくし、ワックス掛けがマストだったりと、要ケア材質。
そして、横浜時代の家で使われていたような、つるっとした床材は、こちらフランスでは格が下のもの、とされているという・・・。
日本は湿気の問題もあるから、考慮すべき点も異なってくるでしょうし、
何ごとも、所変われば、ですね。

キャロー・ド・シモンに戻ると、
フランスでは、「タイルの傷? Ca va ça va、どうってことない。かえって味が出ていいじゃない」と、気にしない人多し。
「そんなことよりも、セメント材ならではの、このマットな感じとか、色の深み・渋みがたまらない!」
と、魅力の方が重視されています。

ちなみに工事の人も、
「ちょっと!傷つけたわよ、ほら、ここここ」
と私が目くじら立てても、
「どこどこ? けっ、そんなの気にしてたら始まらないよ」
と笑って流されてしまって、これはこれでムカつくのですが。

マエストロ近影
まだ床以外はwork in processですが、それでも日々愛着が増しているわがキッチン。
完成した暁には、また報告したいと思います。

日本でもインフルエンザが流行っているようですね、どうぞご自愛されますよう。
今年もどうぞご贔屓に!