2011年5月29日日曜日

筋の通った生き方

山崎豊子の「運命の人」を読み終えました。

彼女の作品は「沈まぬ太陽」以来。今回のテーマは戦後から今までの沖縄の歴史です。悲しすぎる歴史です。沖縄返還のカラクリ、真実を追究した新聞記者が社会とメディア両方からつぶされていく過程、そしてその犠牲になっていく家族・・・。今だったらウィキリークで流せばよかったのよ、といいたくなる。そして、やはりウィキリークは罰せられるべきではない、と再確認したり。

・・・脱線してはいけませんね。

山崎豊子が書きたかったのは、多分、4巻目の沖縄の近代史だと思います。ひめゆりの塔など、薄っすら知っている歴史をあらためて、沖縄の人の言葉で語られると、涙がとまらず、なるほど、沖縄の人が「涙(なだ)そうそう(涙をポロポロ流す様子)」という言葉を作ったのには、こういう悲しい歴史も理由の一つなのかな、と思いました。

そして、悲しみの涙だけではなく、怒りとか、悔しさの涙もじわじわ沸きます。佐藤栄作の小ささ、利己主義さに(怒り)、何故こんなヤツを内閣に選んだのだ(悔しさ)、とか、アメリカの誠意のなさとか。なぜ佐藤栄作がノーベル平和賞だったのでしょう。超意味ないです。

山崎豊子さんはなんと大正生まれ、86歳です。
この本を書き始めたのが約十年前。取材や資料探し、大変な量だと思われますが、なんというバイタリティー。素晴らしいです。同じ女性として、人間として、彼女のように、使命感を持って活動し続ける姿勢に尊敬せずには居られません。
まだ二作しか読んでいませんが、どちらも「筋が通った人」が主人公でした。その奥様も昭和の女性らしく、文句言わずに、けなげに影で支えるタイプで、その受身的且つ献身的な生き方に美しさを感じます。いやぁ、私にはできないわ~。そしてこの奥さんの生き方にも「筋」がある。夫の運命に翻弄されているようで、しっかり自分で選択している。そして、主人公(+家族)が相対する社会は、ねじれていて、歪みに歪んでいる。そういう話です。うぅ、やり切れないでしょ?むかつくでしょ?
終わり方も決して水戸黄門的ではないのが、戦中派、そしてその後の日本を長く生きてこられた方の厳しさなのでしょう。一方で、救われない話ではない。筋通して生きる人だけが持ちえる、内面的な充足感、達成感が書かれていて、「正しく生きるって、大変だな、でも、こうありたいな」と思わせられます。

「文庫化を急いでもらったのは、一人でも多くの人に読んでもらいたかったから。本当の沖縄のことを一人でも多くの人に知ってもらいたい」
とあとがきにありました。是非読んでください。暗い話ではあるのですが、スピード感ある展開、語り口に、落ち込んでいる暇ない、ページめくらなきゃ、って感じです。エンターティメントとしても一級です。

奇しくも、沖縄普天間基地の移動問題がまた先送りされそうとメディアは言っています。
これ以上、この島の人たちを犠牲にすることは許されない。
日本の政治に絶望しないようにしているんですが、菅さんじゃあねぇ・・・。
直接オバマ大領領に手紙でも書こうかと思う今日この頃です。宛先はFacebookのアカウントでいいのかな?