耽美系、お化け系漫画として有名なのですね、この「雨柳堂夢咄」。友人より借りてハマッています。
この頃は、海外にいながらにして、和書も漫画もよく読む機会に恵まれています。私の読書動機はエンターティメントを求めて!に尽きるので、「本屋大賞」とか「このミステリィーがすごい大賞」、漫画であれば、4コマ漫画なども読む。
でも、人間欲張りなもので、軽いエンタメだけじゃ物足りないんですよね。
完全に別世界にトリップさせてくれる、楽しみながらも深いものがある、 作者のあまりの才覚に人類の計り知れなさを知る、といった感動がないと、「まぁ面白かったけど、何だか、無駄な時間をすごしちゃったな」という気持になっちゃう。
と前置き長くてすみません!
この雨柳……、エンタメ+トリップ+才覚、三拍子揃っています。
こんなに気に入った理由の一つは、幽霊話だから。明治時代の雨柳堂という骨董品屋が舞台なのですが、骨董品に魂が宿っていて、出てくるんですよ。
若かったときだったらちょっと怖く感じたかもしれない幽霊だけど、今はとらえ方が変わってとてもホッとするのです。何だろう、死者との交流とい うのでしょうか。もし本当に、他界された人と、こうして繋がることができるのなら、別れの悲しさがやわらぐ。この漫画は、読んでいる間は、そんな「嘘でも信じたい」世界をビジュアル化してみさせて 貰っている、良い夢みさせて貰っている感覚なのです。
今文庫版の4巻目ですが、あとがきの方の文章も感じるものがありました。巻中あるエピソードで、明治の女性が封建的男性社会の中で、自己実現を求めているっていうのに触れて、
「この女性は、やがて職を得て経済的にも自立し、知人に誘われた女性解放運動のような社会活動に興味を示すが、そのうち違和感を感じ離れていく。そして最終的に素敵な男性と出会って再婚し家庭に入っているという結末が良い。」と。
というのは、女性の自立=経済的自立、と考え勝ちで、これも結構だけど、精神的に自立している女性が家庭を築くというのもとても素敵なことだと思うから、とありました。
個人的なことですが、私も、「経済的自立が大切!」と若い頃から働いていたのが、今は家庭に入っています。で、そのことが、精神的自立と反していないんだな、って実感しているところだったのです。
収入があるというのは、自分のためにも家族のためにも良いことにはちがいありませんが。
と、感想文から激しく脱線していますが、この漫画お勧めです。ノスタルジックで、深いし、エンタメ度も高い。秋の夜長に如何でしょう。ストレスフリーの時間、お約束できます。