2013年4月14日日曜日

ヴェネツィアの恋人

高野史緒さんの「ヴェネツィアの恋人」を読み終えたところです。


フランス、昔のドイツ、ロシア、中央アジア、グルジアなどが出てくる短編集。
幻想的だったり、ちょっとSFだったり、普段私が読まない分野なのですが、引き込まれるように、寝る前、メトロなどでページを捲る一週間。読み応えありました。

夢の中の夢、時間軸がずれているような話もあり、正直、わからなくなっちゃうときもあったのですが、何だか読んでいるうちに、著者のチャレンジというのでしょうか、
「ふっふっ、ちょっとここら辺が難しいでしょう。さて、君は乗り越えられるかな」
と言った声を感じて、
「負けないぞ」
と読み続けたところがありました。

最近のベストセラーなどで、特に歴史が絡むものなどは、読者にわかりやすく書こう、というのを感じることが多いのです。ありがたい一方で、「あたしゃそんなにバカじゃないんだよ」と、看護師さんに子ども扱いされてむっとする老人のようなイラつきを感じるのは、私だけでしょうか。読書は精神の癒しという一面もあるけれど、知的チャレンジを求めている一面もあるわけで、高野さんの本を読み終えると、達成感もあるのです。

また、まるっきり現実では重なっていない時代・文化・風景が出てくる話なのに、時々、「同じような不安定さを感じたことがある」というか、「同じような空っぽで乾いた風景を見たことがあるような気がする」って思うことがあるのが不思議でした。人の記憶とか、意識って本人にも計り知れないものがありますね。実際に体験していなくても、共鳴することができるのとか、すごいな、私(というか人類って)って、って思うときです。

「カラマゾフの妹」で江戸川乱歩賞を受賞された高野さん。ぜひ頑張って書き続けてほしいです。