今朝、出勤時にバッグに放り込んだのは、高倉健の「南極のペンギン」というかわいらしいイラスト入りのハードカバー本です。子猿の日本語補習校の図書館で借りました。
高倉健、私の周りにファン多しです。
うちのちび猿の和名は健と書いてタケルと読みます。高齢出産ママの願いの中で、一番強いのは子供がとにかく健康であること。それで健康の健、なのです。でも人に説明するときは、「高倉健の健」というとすぐにわかってくれるので助かっています。
そんなこともあって、「ふーん、本も書くのか」と何気なく手に取った本です。
朝、メトロ9番線に揺られながら、そうだそうだ、と開いてみると……。
なんて素敵な本なのでしょう。健さんが、40年(10年前に描かれたから)俳優やっていてロケなどで訪れた場所での出来事が、寡黙で素朴な健さんの口調で語られています。
激寒、南極ロケでのガイドさんが酷暑の国のインド人だったこと。
遭難しそうになり、「眠るなよ~、死んでしまうから」と声をかけながら、「あれ、これどこかで言ったなー」とは八甲田山でのセリフだった、という落ち。
ハワイで行きつけのベトナム料理の親父さんとのやり取りについてなど、微笑ましく、健さんの慈しみある視点に胸が温まり。
またおかあさんが亡くなられたとき、ロケで死に目に会えず、一週間後に仏壇に向かっていたらどうしようもなくお母さんに会いたくなって、思わず骨壺を開けて骨を食べてしまった話など、息子を持つ身として、また老母を持つ身として、やるせない気持ちになりました。
骨でも会いたいと思うほど愛する人を得た喜び、その人と別れなければならないという悲しみ。
健さんの言葉に何というか、身体の血管に涙がつつーっと通ったような、しびれるような痛みを感じました。
ときどきちょっとユーモアがあって、ほのぼのしてもいるけれど、じーんじーんとする、とても素敵な本でしたよ。