2018年5月15日火曜日

伯爵夫人のマナーブック「フランス人を家に招く その1」



以前別の媒体で掲載された「伯爵夫人のマナーブック」というコミカルな指南書を、隔週にて、エトランゼ♪ブログで再放送しております。
フランスのコンテスと日本人嫁のやり取りを通して上流階級のエチケットについてご指導してもらおう、という趣旨の文章です。100%フィクションです。

ウィットに富んだイラストは、小川健一(インスタやFBは Kenichi Ogawa )画伯作。
お時間あるときにでも!


3章 フランス人を家に招く その1

 先日は慌てましたあ。というのも、コンテスが「主導」するディナーを「私」が拙宅にて主催する羽目になったのです!

 どうしてこんなことになったかというと、コンテスは日本人のBelle fille(ベル・フィーユ:嫁)を持ったことがうれしくてしょうがないよう。「かわいい」とか「自慢」とは違うのです。「ねぇねぇ、ちょっと珍しいものがあるの! 」ってなニュアンスかと。
 それはそれで良しとしましょう。ただねぇ、勝手にうちに人を招くのはやめてほしいと思うのです。それも結婚式以来会ったことのない大叔母とか、自分の友達とか……。「だって、アナタ、みんな行ったことのない家を見てみたいのよ。みんな年寄りでしょう。楽しみがないんだから、シュン……」と都合が良いときだけ年寄りぶるコンテス。
 ま、起きてしまったことはしょうがない。今回は、そのときにコンテスより叩き込まれた学んだフランス人を自宅に招く際の注意点を皆様とシェアしたいと思います。

ディナーには何人招くべきか
 コンテスいわくディナーの頭数は、
 「8人がベストなの。それ以下なら6人は最低必要。4人? ダメダ~メ! 4人なんて、会話がディープにならざるを得ないでしょ。アナタ、ゲストの生い立ちから全て聞いてどうするの。社交はね、その人の一面を知るだけでいいの。全部知っちゃったらがっかりするだけよ」
とのこと。
 ふむ、そういうものかしらね。意外とドライなコンテスです。

テーマを決める
 「そんな大それた料理を出すわけでもないし、招待状なんて必要ないかな」と考えていたら、すでにコンテスが送っていたようです。こういう社交的な事務に関するコンテスの早業には舌を巻きますデス。
 「大丈夫よ。『La soiree de Marco Paulo(マルコ・ポーロの宴)』というテーマのカードを出したわ。RSVP(折り返しの返信)はアナタ宛にしておきましたから」
 ……何、そのテーマって?
 「あら、こういうディナーはテーマがあった方がいいのよ。マルコ・ポーロについての本について語ったり、その時代の歴史について語ったり、装いも芸者風なコスチュームにしたりするの。共通の話題があった方が盛り上がりやすいでしょ? 食事はもちろん、ジパングな感じでお願いね」
 ……えっ? ジパング? ナニそれ~?!



献立の掟
 日本人として困るのは、拙宅に来る人は得てして和食を期待していることです。でも和食って、新鮮さがキーでしょう。そうするとホステス(女主人)が台所に入りっぱなしになってしまう。コンテスによると、これはホステス失格らしいのです。ホステスとは、お客様がくつろげるように、会話を盛り立て、おもてなしするのがお仕事。台所に引っ込んでる場合じゃないということなのです。そうなると献立の方は、揚げたてがおいしい天ぷらはダメ、蕎麦は伸びてしまうし。お寿司もねぇ。また、焼き魚は匂いが強いからダメ、煮魚・煮物は地味だし……。コンテス日く、人を呼んだときには「あっと驚かせるような一皿」が必要だとか。家庭料理しか作ったことがないワタクシメに多大な要求をするコンテスなのです。
 そこで見つけた逃げ道は、前菜か主菜のどちらかは、和風にこだわらず、作り置きが利く一皿にすることです。例えば、マグロのわさびしょうゆタルタル風(レモンでマリネして臭みを一切残さないことがコツ)を前菜にしたら、メインは、子牛のロティ(ロースト)でも、魚のオーブン焼でもいいのです。また、逆に前菜を洋風にしたのなら、主菜のローストビーフはソースだけ和風にするなど、ちょっと「ジパング(ちがうか)」な感じにすればよいかと。全然「あっと驚く」一皿じゃないって? そうなのですが、あとは漆器や和皿を使って「ジパング」を演出すれば、まぁ何とかお茶を濁せます。
 そうそう、以前、ディナーに豚の角煮を出したことがあります。味付けがしっかりしているし、醤油味だけど、フランス人も食べやすい一品だろうし、煮込んでおけばあとは出す前に温めるだけでOKですからおもてなしにピッタリ、と思ったのです。果たしてお客様には大好評でした。

 ……が! 後でコンテスに叱られたのです。なぜか、おもてなし料理に豚肉はダメだというのです。別に宗教上の理由で食べられない人がいたわけでもないのに、「変!」と抗議しましたが、「Cest comme ca(こういう決まりなの)」 とコンテス。そのときは憤慨しましたが、確かに、他のお宅に招かれたときに出てきたことがないのです、豚料理。どうやら豚料理は「都会の街、パリ」でのディナーにふさわしくないというのは本当らしい。理由? 誰も明言してくれませんが、察するに、まずハム、サラミ、パテなどシャルキュトリ(豚肉加工食品)として日常的に多く食べていること、そして食材として他の肉より安いことがお客様を「手厚くもてなす」のにふさわしくない理由なのではないでしょうか。要はちょっと気取った食事の席にアジの干物が出てくるようなものかと。豚さん、かわいそうにね、差別されちゃって。

 その他、フランス人を食事に招くときに気をつける点としては……
① ニンニク、カレーなど匂いが強いものを使うときは少量で。
② 玉ねぎは好まない人が多いようです。フランスのたまねぎは日本のより強いから胸焼けするのでしょうか? それとも口臭が残るからかしら。
③ 郷に入っては郷に従え、です。フランス人にとって食習慣を変えることは難しいようですので、和食メニューであっても、前菜、主菜、サラダ、チーズ、フルーツ、デザートというフランス式の流れに沿った献立が喜ばれるかと思います。

 とにかく、完璧な和食を作ろうなどと意気込むのは危険かと。適当に肩の力を抜いて挑んでくださいね。

 ワインの選び方、席順、テーブルセッティング、そしていよいよお客様登場の際の歓迎の仕方など、コンテスのマナーレッスンはまだまだ続くのですが……疲れましたね。
 ここらで一服しましょうか。続きはまた次回ということで、A bientot!


1 件のコメント:

  1. INSEADは何年に卒業されていますか。

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