2014年10月21日火曜日

丸の内ものがたり

昔のビクトリア風赤煉瓦の三菱一号館美術館がある一角。
後ろには新品の高層ビルがくっついています。
先週金曜日は、一般公開が始まったばかりのミレー展を観に、三菱一号館美術館に行ってきました。
同行してくれたのは、高校からの友人でAKちゃん。
ミレーといえば、フォンテーヌブロー。フォンテーヌブローといえばInsead、我が母校だし、農民の絵には何故か惹かれるし、バルビゾンにも何度か足を運びました。
そしてAKちゃんといえば、パリ大美術史の博士号を持つ才女。
下手な写真で申し訳ございません、ミレー氏よ。
是非、上のミレー展のリンクで正しく撮られた名画「種まく人」を観てください。
展示会初日に、遠方から観にいったのです。
素晴らしいでしょ?この芸術欲。それはそれは造詣深い話になったかというと……

ミレーの描く、力強い農民の働く姿を観てたら、働いてもいないのにお腹が空いちゃってね。
三菱一号館美術館に併設されているオシャレなブラッセリーに招いてくれようとするAKちゃんを、強引にオヤジくさい牛タン屋に引き込み、AKちゃんの、「何故遅刻しちゃったのか」というのに、「いいよいいよ、東京駅、わかんないもんね、もう年だからなんでも時間がかかるよね(?!)」という、たわいもない話となったのでした。

東京駅、丸の内辺りは、そこで働く機会がなかった人には、たとえ生粋の東京人だろうとも迷路のようです。
特に今の丸の内は、もうディズニーランドのようにピカピカで美しく、オシャレで、日中は人混みも少ないので、映画のセッティングに入ってしまったような不思議な感覚。

そんな中、ふと目に入ったのが東京會舘。
私が、「あぁ」と思ったのと同時に、
AKちゃんも、
「あ、東京會舘があった」
この「あった」は「見つけた! 」という意味の「あった」ではなく、「そうだった、東京會舘があるじゃない」という「あった」だったと思います。
AKちゃんの、プルーストのマドレーヌ的な東京會舘のプチフール。
これは秋バージョンです。
そして私の「あぁ」は、
「そうだった、日本に来たら、東京會舘に行くんだった」
というのを想い出しての「あぁ」です。
このことを、東京會舘を見かけるまで、まるっきり忘れていたというのでもありません。
パリから戻ってきて、東京駅に行くたびに、皇居を遠くに認めるたびに、「あの近くにあるんだよね、T會舘」って想ってて、いつ行くことになるんだろ、私、って気になっていたのです。

東京會舘は、井上靖の小説「化石」に、T會舘として登場しています。この大作のタイトルが「化石」というのの、理由がここにあるという、大切な場所なのです。

「化石」では、ガンに冒され、もうまもなくこの世と別れるだろう初老の主人公が、この何ヶ月もの間、死と会話し、死との対面の準備をしている、その道筋を記した話なのですが、そんなある日、主人公はT會舘の、化石が埋め込まれた大理石のロビーにて友人が来るのを待っている。すると、太古からの時の壮大なる流れが実感されて、その中にいる自分の死を自然なこととして受け止められる……
という、主人公が、死を受け入れる心境になる、読者も死とはそういうものなのか、と説かれる、そのステージがT會舘なのです。

もしお時間あるようでしたら、以前小説「化石」について書いたことがあるので、コチラを観てくだされば少しわかるかな。

そのT會舘が、映画のセットのような新・丸の内の脇道にふっと現れ、AKちゃんという、お互い高校時代からの30年という時間の重みを現実のものとして実感できずにいて、気持ちだけは永遠のティーンエイジャーなる、ふわふわマインドの同志と一緒に足を踏み入れ、ついに、あの「化石」のロビーを探した!

でも、ワカラナイ。
このロビーの、この壁のことを言っているような気がするけれど、どこかで違うって知っている。
「聞いてみなよ」とAKちゃんは言うけれど、
「え~、変だよ。なんて聞くの? 『つかぬことを伺いますが、私が生まれた頃に書かれた、ま、それって約50年も前のことなんですけどね、井上靖の「化石」という小説をご存じですか? その一場面に、こちらのロビーが出てくるのですが』……なんて聞いても、あんな若い人たち、『は?』ってなもんでしょ。」
なんていうやりとりをしていたら、とても真摯な印象の職員の方を見つけましてね、吸い寄せられるように、「あの~、つかぬことを……」というセリフがスラスラ出てきて、尋ねたところ、とても温かい対応を受け、実は・・・・・と教えていただいた話は……。

長くなるので、以下、第二部に回してもいいのですが、めんどくさいので一気に書きます。お読みになる方は、ここで一度閉じてくださってもかまいません。

::::::::::::::::::::::::::::::
現在の東京會舘は、今から約40年前に谷口吉郎氏により建築されたので、実は、「化石」に出てくるロビーは、もう取り壊されたそうです。
ところで、谷口氏は、その頃としては先鋭なるアイデアを持っておられ、アーティストとのコラボを実現されたとのこと。ロビーのモザイクなど、猪熊弦一郎氏の作品が多く置かれています。マティスを彷彿させる、ポップなアートは40年経っても魅力があせないものですね。

猪熊氏のモザイク。©AKちゃん
さて、問題の化石ですが、旧館を取り壊すにあたって、あまりにももったいない、ということになり、一部を11階、12階のエレベータホールに移動されたそうです。今回は無理を言って、見せていただいてしまいました。

ジャジャーン!
という割には下手な写真でスミマセン。
コレニア大理石は、約6億年前の珊瑚の化石からなる大理石だそうです。
思わず両手をあててしまう。
目を瞑ると、ひんやりとした感触の奥に、何かが見える。
でも何にも見えない。
宇宙みたいな際限ないものを漠然と感じるのです。
すごいね、化石って。

そしてこの大理石で作られた旧館は、関東大震災にもびくともしなかったそう。
小説によると、当時は、こうして大理石を使った建物がいくつもあったそうです。
現代は、豊かになったようでいて、昔はできたことができなくなっている。
古いものを壊さずに、新しい技術を積み重ねていければいいのにね。

というのも、この建物も、丸の内ディズニーランド化の波の中、来年1月に取り壊しをはじめ、2018年頃に新しくなってお目見えとなるそう。新しい建物はどんな感じなのでしょう。

そのときにこの大理石を移築するのでしょうか。
もし、しないのなら、是非、一般の人々に買い取るチャンスを与えてほしいです。

ちなみに、現在のロビーも大理石で作られています。それも職人さんが手によって打ち均したという、現代ではあり得ない手の込んだものです。これはどうするんだろう。そして猪熊氏のモザイクは?

最後には現実的な気持ちにもなり。
でもやっぱり、この日は時空を超えた空間にトリップしたような、夢のような時間だったな。

でもね、家に帰ったら、掃除・洗濯・炊事・育児が待ち受けていて、ま、ショウガナイ。

長文にお付き合い頂き感謝です。
また行きますね。



2014年10月9日木曜日

インターナショナル・スクール VS フランス現地校

台風18号がここ横浜にも来訪し、去って往った今週。
金木犀も吹き散らされたかと思ったけれど、今朝あたりより また香しい匂いと共に再び開花しているようです。
それにしても、あっという間に10月なんですね。
10月といえば、ハロウィン。
日本でもすっかり定着したようですね。
子猿たちが横浜にあるインターナショナルスクールに通い始めて、2ヵ月近く経ちました。
もうすっかり慣れてきたようです。

まず英語。
兄猿は9歳ですので、インターでは4年生。
兄猿、パリの学校で2年、3年生のときに「英語特訓クラス」とやらを採っていたこともあり、意外なほどに、英語は苦になっていないようです。また兄猿は性格的に、好奇心が強く、
たとえ上手に話せなくても、周りに迷惑となっても、話してみたい、読んでみたい、書いてみたい派で、
私などはそのふてぶてしさにあきれることもありますが、
この新しい環境では吉と出ているよう。

一方、2年生のちび猿は、当初は、
「ボク、英語は話せないんだ」
「フランス語セクションに行きたい(このインターには、小さいながらもフランス学部があるのですよ)」
と少しだけおじけついてましたが、先生のサポートのお陰で、この何週間は、急に自信がついたみたい。

そして、子供は語学に強い、という神話は本当だと思いました。

ちび猿は毎晩、30ページ程の簡単な絵本を読まなくてはならないのですが、元々、ほとんど文盲だったのに、毎日上達しているし、英語の発音も本格派です。

とにかくにも学校側の援助なしではここまで来れなかったでしょう。
兄猿・ちび猿2人とも、現在は、普通の授業の合間に、毎日30分、英語の先生に特訓してもらっています。まずはこれを8週間やってみて、その効果をみてもっと必要があれば、続行するそうです。

それに加えて、ちび猿は先生の計らいで、授業中にミニiPadを貸与されていて、それに言いたい言葉をフランス語で書いて、英訳させるという試みもしてくださっているよう。
ただこれは効果があるのかしら。……ガジェット好きのちび猿は、そりゃ憧れのiPadに大喜びだけど、何しろ、フランス語の綴りもままならない子猿だからインプットする時点で誤字フランス語でしょう。
翻訳ツールは機能するのでしょうかね。

…...とにかくこの英語に関する援助には、学校に感謝感謝です。



その他、フランスの学校と比べて違うなぁ、という点を挙げますと、

・ とにかく「ファンタスティック!」
……噂には聞いていた、アメリカのポジティブ・フィードバックは予想以上にそうでした。
「うちのコ、どんな感じでしょうか」と聞けば、「He is ファンタスティック!いい感じいい感じ!」ってなもんで、
体育の先生とすれ違えば、「今日もちび猿君、よーく走ってた!He's グレイト!」。
図工の先生に会えば、「兄猿君は天才ね!ちび猿君の色のセンスはファンタスティックよ」

……とまぁ、実際を知っている母猿からすれば、色んな事象の中から見つけ出した褒めどころを10倍以上誇張して褒める褒める。
母猿が、「でも、うちのコ、綴りがだめでしょ、字が汚いでしょ」など言って、ほんとのところを聞き出そうとしても、「あらぁ、そんなのいいのいいの! それより、聞いた?兄猿君の達成度チェック。すごい進捗状況よ」と、とにかくポジティブな点にフォーカスを当てているようです。

母猿、最初は、この「褒めすぎ」傾向に戸惑ったものでしたが、今では、徹底的なポジティブ思考に、ある種の爽快感を感じています。

私は子猿たちに対して、「よーやった。でもここは全然だめ。改善するように」と、現実を見据えて説教するタイプで、それは、もちろんその方が子供のためになるだろう、と思っていたからなのですが。
徹底したポジティブ精神は、確かに子供に自信を植えるだろうな、と、認めざるを得ないようになりました。
考えてみたら、短所なんて、本人が一番知っているだろうし、また他人から指摘されたところで本人がそう認識していなければ、ガタガタいってもしょうがないのかもしれないし。

フランスの学校はどうだったっけ、と思い起こすと、私と同じ程度のポジ・ネガ混合フィードバックだったかと。ネガティブな意見も、歯に衣着せずに「字が汚すぎ!やり直し!」という感じ。ま、私もきついタイプだから、「そうそう、汚い! 書き直しなさい!」と追撃してましたっけ。あれは良くなかったのかもなぁ。



・チームワーク重視
これも噂には聞いていたことですが、本当に、チームで色々プロジェクトを組むようです。例えば、算数などという、個人で問題を解いて訓練するしかないでしょ、と思われる科目でも、「解き方をグループごとに考えて発表する」らしい。このアプローチが学習能力にどうなのかは不明ですが、少なくとも、友達とワイワイ考えるのが楽しいみたいです。家に帰ってきても、「誰々がこんなこと言ってね」とか「そのときに僕がこう提案したんだ」という話が多くて、特に兄猿は社交的でないので、受け入れてもらえてよかったね、友達と楽しい時間が持ててよかったね、と思いますし、兄猿はこの経験より少し自信がついてきたように見受けられます。

フランスの学校ではまだ学年が若かったこともあり、チームでやるプロジェクトはなかったような……。個人主義ってやつですかね。

・プレゼンテーションも多い
兄猿のクラスでは早速、科学の授業でプレゼンテーションがありました。親も観に来ていいよ、ということだったので行ってきましたが、あらあら、リッパだこと! コンピューター使ったり、模造紙に資料を書いたりと、やってるヤッテル! これらプレゼンはチームでやってよし、一人でやってよし、という鷹揚な姿勢もいいな、と思いました。

また小2のちび猿たちも、週に一度くらいはクラスメートの前で、自分の好きなものについて話すとか、あるトピックに対する意見を述べるなど、パブリック・スピーチの練習をしています。
フランスの学校ではこういう機会はなく、それがあのフランス人のプレゼン下手に繋がっているような気がします。
かぼちゃシリーズのネタがつきましたので、小花を一つ……
・ 父兄参加型のイベントが多い
多いどころじゃない、すごく多いです。既に、しょっちゅう授業参観があるし、朝礼にもどうぞ、っていうのもあった。そしてまもなく、ハロウィンのべークセール、体育祭、クリスマスバザーなどもあるようですし、2週間に一度はイベントがあるんじゃないかな。その準備のために駆り出されること多くて、その他にも親のためのクラブ活動というのも盛んだから、四六時中子猿の学校にいる気がします。子猿たちも、もう「ママもここにいる人」という感じなのか、学校ですれ違っても、「Oh,hi!」ってなもんです。
働いていたら、こうはいかないと思うけれど、学校と家庭の敷居が低いのは子供にとってはいいことなのではないか、と思います。一体感というのかな、なんか安心するんじゃないかしら。
フランスの学校では年に1、2回しか、子供達の教室に入る機会がなかったですし、「家庭は学校の方針に口出すな」という感じありですし。

……と長くなりましたが、その他にも、一クラス少人数制、音楽・美術教育重点的、イジメゼロ!という姿勢、先生は夜でもメールでやり取りに応じてくれるほど親身、あと日本語教育も週2時間ある、給食がおいしい、放課後のクラブも充実している、など、いまのところ、新しい学校に満足の親猿・子猿です。 

ま、今はね、年齢的にも進路とか考えなくてもいいし、プレッシャーもない、少年時代の黄金期。
この時代を謳歌してもらうとします。

2014年10月5日日曜日

フランスの味を日本で……

今週は買い物が楽しい一週間でした。
ここ横浜にも秋が訪れたようで、スーパーに行けば、柿、みかん(もう!)、さんま、秋鮭がお買い得な値段に下がり、栗はあるわ、神奈川県産のサツマイモはあるわ、季節が夏から秋に移ったことを確認させられる品揃えでした。

食の国、フランスの農産物、肉、魚のおいしさは、日本より勝ると思います。でも日本には日本ならではの作物や魚があって、例えば、小松菜のように、えぐみというかアクっぽい野菜、歯ごたえが楽しい野菜(日本のキュウリ、もやしなど)はフランスでは手軽に使うことはできない。
たとえば、小松菜、葉唐辛子、三つ葉、水案、茗荷といった
冷蔵庫にたむろってた青野菜を
友人からもらった茅の舎のだしでさっと煮ただけの
香川県産の細うどん。

アラフィフの腹にぴったりの味だこと。
日本ならではの一人ランチメニューです。
あとなんといっても魚が新鮮で種類が豊富。
浅利、ホタテ貝柱といったものも、20分並ばずとも(カールフール、オトィユ店調べ)気軽に新鮮なものが買える。そして、産地も細かく表示されているから、自分で安全リスクを確認しながら購入できる。(放射能って言葉は、タブーなんでしょ?「安全」という言葉に置き換えることになっているらしい昨今の動きに倣ってみました)
パリでだったら、北海水産、マルシェを動員して
100ユーロするかもしれない手巻き寿司も
徒歩5分圏内、コストは半分以下で調達できる。
兄猿よ、今だけのご馳走だからね、食いだめするのよ。
一方、フランスの方が有利なものは、たとえばビフテキなどの肉のおいしさがキーの肉料理。
牛・豚・羊・鶏、どれとってもフランスの方がおいしいと思います。コクが違う、野趣味が違う、熟成度が違う。

また、じゃがいも、ニンジンといった根菜類もフランスの方が甘味が強くて好みです。フランスの土壌は肥沃なんでしょうね。レタス類もフランスのはもっと葉っぱの味がすると思う。果物もそうだけど、フランス産の方が味が濃いと思う。

パリの週末と言えば、何かのローストかビフテキ、そして添え物にはポンムドテール・ソテー(詳しくはコチラを)だったのですが、これを日本のジャガイモでやっても、甘味に欠けるのでイマイチです。
日本のジャガイモはどの種を使っても、パサパサしている。そこで、ポンムドテールエクラゼと呼ばれる、ゆでたジャガイモをフォークの背でつぶし、バターをたくさん乗せるという、いい加減なマッシュポテトの様なものを作ってみたのですが、甘味が少ないので、塩バターとのコントラストがイマイチで、ツマンナイ味。そこで、今旬のサツマイモを混ぜてみたんですが、そうしたら、結構フランスのに近づいてきました。

反対に、敢えてア・ラ・ジャポネーズをやってみたのが、このシリアルバー。
もともと適当な私の料理ですが、シリアルバーはその究極でして、
オーツ麦、2合
ナッツ 1合 (「合」なのは、長いこと計量カップすらないままお菓子作りをしていたからです)
……これらはざっくりとフードプロセッサーで細かくしておく。

オリーブオイル大匙2
はちみつやメープルシロップ 大匙2
砂糖 大匙2
水 大匙2
塩 小さじ1/2

と言う基本型の材料をただ混ぜ、
天板に敷き詰めて
130℃のオープンで焼く。

のですが、
今回は、ナッツをアーモンドにして、さらに1/2合の煎り大豆、大匙2のイリゴマ、そして塩の代わりに味噌を小さじ1強混ぜてみました。さらに、糖分として黒蜜を大匙1加えたり、と日本ならではの応用をしたのです。
さて、いざ焼こうとしたら、新居のオーブンがガスオーブンで、最低温度が170℃ということに気づき、でもま、しょうがない。170℃でやってみたら、30分程で、カリッとなり、「なぁんだ」と、ますます「いい加減でもいいんだ」と危ない確信を得。

大豆が入ると、急にひなびた味になりますね。私的には大変美味しゅうございましたので、
「超いい加減料理」をシェアさせて頂いた次第で。

大雨の今日、台風、参りましたね。
どうか皆さん、ご無事に、そしてご自愛を!