2012年10月24日水曜日

兄猿のこと



うちの兄猿は7歳です。
フランスではCE1(セーウーアン)と呼ばれる2年生。
体格はすっかり少年化しちゃって、もう幼な子っぽさはなく、顔は、時折赤ちゃんみたいだけど、二ーッて笑うと前歯が抜け落ち犬歯が目立つので小さな吸血鬼みたいな様相。父親には「プティ・ヴァンピー」と呼ばれています。 

夏前は屁理屈こねるし、母猿をうるさがる、ミニ反抗期だったのが、秋になり、すっかりいい子になっちゃってまぁ……と思っていたら。 

もちろん落ちがありますよ。 

何だかねぇ、学業が疎かになっちゃったのです。 

9月から私が働き出したので、放課後は日本でいう学童みたいなのに入れたのです。学童といっても、エチュードといって、補習みたいなことをするシステムです。一回あたり3~5ユーロ位でしょうか、ベビーシッターさんに比べると安価。「そんなに丁寧にみてくれないよ」とは聞いていたけど、それでも宿題を終わらせて帰ってきてくれるは有難い、と思っていました。 

果して、鬼母じゃなくてエチュードだから気を抜いてやっているのが悪いのか、ただただ、学業が下り坂になる運命だったのかわかりませんが、とにかく、兄猿、低空飛行中。 

そんな今夜、久々に兄猿の宿題を見ました。エチュードの代わりに柔道の日なのです。普段は父親に見て貰ているのですが、今日は不在なので、母猿が代行。疲れてんのになぁ、まぁしょうがないか。 

ノートを開くと、あらあら、本当に何て汚い字を書くのかしら。音読も飛ばし読みしているし、トホホ。でも、まぁ、いいわ。私も子供の頃かなり出来が悪かったけれど、今こうして生きている。何とかなるから、と自分に言い聞かせ、切れないように、切れないように、と自分を応援します。 

音読は、兄猿が読んだあとに、私が読みます。 
「いい、ママはフランス語上手に発音できないからそこんところは聞き逃してね」 
こんな複雑で、難しい(「発音」「聞き逃す」という語彙など)日本語、意味わからないでしょうが、とりあえず、母猿のイライラを感じてか、 
「うん」 
と答える兄猿。 
音読の次は、文法です。文法なのですよ!日本で7歳のときに文法なんてやりましたっけ? 
「動詞とは」というくだりを棒読みし、そのあとで日本語で説明します。
「わかる?」 
「うん」
……本当か? 
「動詞の最後の部分は主語また時制によって変化する。これをConjugaisonという……わかる??」
わけないよね。 
でも
「うん」
という兄猿。 

……まぁいいや。 
机のランプが兄猿の不器用な手元を照らすのを見ているうちに、何だか暖かい気持ちになって、心の中で「まぁ、頑張れよ、なんとかなるから」と今度は兄猿にエールを送る母猿。 

それにしてもフランスの子供ってすごく高度なことやっているような気がします。少なくとも、アライグマのぬいぐるみやレゴが大好きなうちの兄猿のレベルを考えるとすごく高度。 

いずれにせよ、静かに、物静かに宿題を終えた今宵。
それでもピアノの練習をしたいというから、電子ピアノのヴォリュームを下げ、「ママ、聴いててね」という兄猿。
あらあら、夏前は「あっち行ってて」だったのにね。
いつになく姿勢よく、卵を包むように指を立て、丁寧に弾いていたと思ったのは気のせい? 


久しぶりとても静かな30分+を兄猿と過ごせて良かったな、と思った母猿です。 

ところで、フランスは2013年9月からの新年度以降、宿題を廃止するそう。家庭によっては子供の勉強を見る余裕のない親がいて、それが学力の地域格差、ゲットー化を進めているから、という理由だそうです。 

確かに、時間が取れない親も多いだろうけれど、メンドクサーって思って放置する親もいるだろうけれど(←普段の私)、子供と宿題を通して接する、この「ぬくもり時間」いいのになー。そう思っているお母さんはゲットー地区にもいると思うんだけどなー。 

……政府もお節介ね、と思ったりする今夜の母猿です。