2011年12月12日月曜日

二冊の本

先週は「オバサン未満」というのと「グランド・ミステリー」という、全く関連性のない二冊の本を読みました。前者は、現代アラフォー洞察エッセー、後者は本格的ミステリーで舞台は第二次世界大戦末期。

オバサン未満を書かれた酒井順子さんはプロフィールを見ると66年生まれ、ということは私の一歳上です。本では、40代に突入して発見したことを面白おかしく書いてあり、同感することもあれば、そうでないことも多々。例えば、彼女はその昔「バブル世代」だったアラフォーは今だに景気良いことを好む、というのですが、私はそうではない。たった一年の違いがそう思わせるのか、属する社会層が違うからなのか。
私の場合、学生時代はディスコ全盛や就職売り手市場というのはそうだったけれど、87年にブラック・マンデーがあり、90年に就職したもののボーナスは下がる一方でした。その後も景気の悪い話ばかりだし、いつも黒い影が後ろから忍び寄っているような、前方の空には今にも雨が降りそうな雲が待っているような不安感の中にいます。
「バブル世代」は元気がよく、お金を使うことに躊躇いがない……確かにそういう社会層も存在するのでしょうが、ピンと来ません。どちらかというと私は「人生の辛酸を知っているアラサー以降」の価値観の方が身近に感じます。肌のハリだけは、りっぱにアラフォーですが……。

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さて、奥泉光氏のグランドミステリーは素晴らしかった。
この作家はちょっとだけウンベルト・エコーみたいではないですか。プロットも綿密だし、時代(昔+現代)に対する造詣も深い。ところどころで彼の日本に対して感じていることを話から浮かない形で表現しているところも素晴らしい。
「日本人は幽霊だ。実体なくゆらゆら流れている」……落ち込むけれど、本当にそうだ、と思ってしまう。「日本は今後もアメリカの属州として形骸化しながらビクビクと存続するかもしれないけれど、少しずつ滅亡に向かっている」……放射能のニュースに怯えながら、どうやって子供を守ろうかと思っている親御さん達の想いではないでしょうか。
本の所々で、主人公の妹、範子がそんな暗いの「関係ないわ」とでもいうのな潔癖さで登場するのが救いです。そして、範子のキツイ発言も小気味良く。

この関連性のない二冊に共通しているのは、女性は強い、ってことかと思います。いい意味でも、そうでない意味でも。
戦後焼け野原に立ちすくみ、男性らが絶望している横で女性が思ったことは「今夜の味噌汁の具、どうしよう」というのを友人(女性)から聞いたことがあります。想像易し、ではありませんか?
景気の悪さ、社会の暗さを吹き飛ばすような力強い女性、明晰な女性、そういうヒトにワタシもなりたい、と思いますです、はい。